「世界三大がっかり」というのをご存知でしょうか。
有名な観光地と聞いて楽しみにしていたのに、行ってみたら、「こんなもんなの……?」と話に聞いていたほどの感動を味わえない観光名所のことを言います。
最近はあえて「がっかり」しにその地を訪れる方も多いようで、どちらにしても一見の価値はありそうですね。
今回はその「世界三大がっかり」のひとつ、シンガポールのマーライオンについてご紹介します。マーライオンとはそもそもどのような存在なのでしょうか。
マーライオンは、シンガポールを象徴する半獣半魚(上半身がライオン、下半身が魚)の彫像です。
もともとは彫像ではなく、1964年にシンガポールの観光局がシンボルマークとして作ったイラストでした。そのイラストをもとにして、1972年にシンガポールの彫刻家(Lim Nang Seng)によって製作され、シンガポール川の河口に設置されました。
意外と歴史の浅いマーライオンですが、マーライオンの伝説自体は古く、11世紀にまでさかのぼります。
11世紀、マレーシアの王族が対岸の大地(シンガポール)を目指し海を旅していたときのことです。航海の途中海が激しく荒れ始めます。王族は波を収めるため、かぶっていた王冠を海に投げ込みました。
すると海は静まり、彼らは無事に目指していた大地にたどり着けました。そしてそのとき、ライオンが彼らの前に現れたのです。
ライオンを見た彼らは、その土地を「ライオンの町」と名付けます。「ライオンの町」を彼らの言語、サンスクリット語で言うと、「Singa(ライオン)Pura(町)」です。こうしてシンガポールという国ができました。
この伝説がきっかけでライオンがシンガポールのシンボルになります(ちなみにシンガポールにライオンは生息しておらず、実際に王族たちが見たのはトラだったと言われています)。
前項で紹介したとおり、マーライオンはもともと普通のライオン(上半身も下半身もライオン)でした。
しかし1964年、シンガポールに政府観光局が設置された際に、バンクリフ水族館の館長(フレーザー・ブルーナー)が前述のライオン伝説と、シンガポールがかつて「海の街」と呼ばれていたということから、
フランス語で海を意味する「Mer(マー)」と「Lion」を組み合わせた「マーライオン」というイラストをデザインの発案をします。
そのとき、下半身が人魚のように魚になっているデザインになったのです。
そのデザインが、マーライオンが現在のような姿になった由来と言われています。
マーライオンは建設当初、シンガポール川の河口に設置されていましたが、その設置後付近に橋がかかってしまい、マーライオンを正面から見ることができなくなりました。
これが「世界三大がっかり」に認定された大きな要因のひとつ。
ほかにも、ポンプがしょっちゅう故障して水を吐けなくなるなど課題が山積み状態で、「世界三大がっかり」の一角を担うことになったのでした。
ただし現在では、マーライオンはシンガポール公園に移設されたり、正面から見えるように桟橋がかけられたりしてマーライオンを正面から見ることが可能になりました。
またポンプも修理されて、元気に水を吐いています。
シンガポールを象徴するマーライオン、本当に「がっかり」なのかどうか、シンガポールに足を運んで確かめてみてはいかがでしょうか。